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兎年だから、ウサギにまつわる話を書こうと思いました。
色々考えているうちに、英語の言い回しで、
go down the rabbit hole(変な方向に向かう)
を思い出して、気になったので、語源を調べてみました。
そうすると、どうやら「不思議の国のアリス」が由来で、アリスがウサギ穴に入ると不思議の国に来てしまって、いろいろ変なことが起きるから、だということがわかりました。
これは面白いネタを見つけたかもしれないぞ、と思って「不思議の国のアリス」の原作本を買いました。昔のディズニー映画もみてみました。子供向けの作品だとたかをくくっていたら、とんでもない。社会の闇というか、ダークサイドが永遠と、皮肉たっぷりに描かれているのです。これはすごいものを見つけてしまった。
不思議の国のアリス
なにもやることがなくて暇そうにしているアリスは、大きな懐中時計を手に、忙しそうにしているウサギが入っていった「ウサギ穴」に、後を追って飛び込みます。そこは、動物も植物も人間の言葉を話す「不思議の国」につながっています。
不思議な国に迷い込んだアリスは、いろいろな住民たちと出会いながら、旅をしていきます。その出会いの多くは、決して楽しいものではありません。アリスの旅のほとんどは、苦しくて大変なことばかり。
イギリスの数学者でもある、ルイス・キャロルが、7歳の少女アリスの旅を通じて描こうとしたのは、世の中が抱える様々な問題や課題について。それはもちろん、キャロルがこの作品を発表した「1865年」当時のことについて、なはずなのですが。
「時間に追われ自由を奪われている」ウサギにはじまり、多種多様なお花たちがアリスの外見を「差別していじめ」たり、「恐怖政治」によって白いバラを赤に塗り替えるという「不毛な作業」に追われるトランプ兵たち、「頭がイカれている人達」による理不尽で「永遠に終わらない」お茶会、「まともなアドバイスはしてくれない、年配ヘビースモーカー」のイモムシ、そして「気に入らない事があるとすぐに首をはねてしまえ!と命令」するハートの女王…
すべて「2023年」においても、ほぼほぼそのまま、いま起きている事ばかり。まるで、キャロルは2023年の未来を想像して物語を描いたかのよう。いや、もしかしたら、もっと先の未来を想像して描いたのかもしれない。タイムマシン「不思議の国のアリス号」は、私たちをどこに連れて行こうとしているのでしょうか。
想像の正確さ=センスの良さ
タイムマシンが本当に存在するとしたら、そのタイムマシンに求められる機能とはなんでしょうか。それはきっと「正確な未来」に連れて行ってくれることじゃないでしょうか。タイムトラベルをして到着した未来が、本当に正しい未来なのかどうかを確認する方法はありません。「未来に到着しました」と言われたら、そこはきっと正しい未来であることを信じるしかありません。
その点において、不思議の国のアリス号は、とても優れていると言えます。なぜならば、不思議の国のアリスには、2023年の私たちが暮らす時代のことが、正確に描写されているからです。150年にわたって、その正確性が証明され続けているのは、相当信頼できるタイムマシンなのではないでしょうか。
これは私の持論ですが「想像が正確である」ということは「センスが良い」と説くことができると考えています。
例えば、芸人さんが「観客が笑っているところを想像し」ながらコントのネタを作り、「本来笑うべきところで観客を笑わせることができた」ら、それは「想像が正確だった」ということになります。私はこれを「センスが良かった」と説きます。逆に、「笑わないはずのところで笑われてしまった」ら、それは「想像が正確ではなかった」ということになり、「センスが悪い」と言えるでしょう。
本人は意図せずとも、キャロルが想像した不思議な世界は、極めて正確に未来を描写しています。150年もの時空の旅に耐えうる、強固で抜群にセンスの良い、タイムマシンを作ってしまったのでしょう。
未来から「警告」と「希望」を読めるか
そんな、正確な未来に連れて行ってくれる、センスの良いタイムマシンが存在するとして、そのタイムマシンに乗ることができるとしたら、なにを期待しますか。
私だったら、これから起きる出来事について知りたいと思います。未来に着いたら、まずは図書館に行って、歴史を調べます。これから起きる災害や事件とかを知ることで、それを「警告」として現代に持ち帰ることができれば、最悪の事態を回避するための準備をすることができます。つまり「希望」も手に入れることができるのではないでしょうか。
不思議の国のアリスは、センスの良いタイムマシンです。150年前から、150年後の社会課題を正確に描写していました。そしてきっと、さらなる未来のことも正確に描いてあるのでしょう。だとしたら、私たちはそこから、なにを得ることができるでしょうか。警告をみつけ、希望に変えられるでしょうか。
疑似体験でも経験は増える
私は「不思議の国のアリス」の皮肉で未来的な世界観を、どうやってみなさんに「疑似体験」していただけるかを、考えています。
本ウェブサイトのコンセプトでもあるように、私には「疑似体験」欲求があります。
他人の経験を「疑似体験」することで、自分の経験にしてみようとします。例えば、友人が旅の思い出話をしてくれるときとか、私はその「疑似体験」をするために、なるべく正確な描写を求めます。詳しく状況を把握するために、執拗に質問を続けてしまいます。まれに喜ばれることもありますが、ほとんどの場合、しつこいと思われていると思います。
そうして、状況をなるべく正確に頭の中に描写し、実際にそれを体験した本人になりきることができたら、まるで自分が、それをリアルに経験したかのような感覚を得ることができます。繰り返していけば、自分一人だけの人生では到底無理な量の経験を積むこともできるかもしれません。マトリックスでネオが格闘技のスキルをダウンロードして手に入れた感じに少し似ているかもしれません。
疑似体験は、私のライフワークというか、趣味というか特技というか、大切にしているものです。ですから、私たちの経験を少しでも「疑似体験」として記録に残しておこうとしています。それがもしかしたら、誰かの「タイムマシン」になるかもしれないし、失敗を未然に防ぎ、成功の確率をあげるためのお手伝いになるかもしれないと信じています。
アンカースターというタイムマシン
最後に、少しだけアンカースターについてお話させてください。
アンカースターは、海外企業の日本進出を支援すべく、2015年に設立しました。
実際、いくつもの海外企業が、私たちが運営するコワーキングスペース「Anchorstar Lounge」を最初の拠点として、日本進出を行いました。最初はどの海外企業も、日本支社の社員は1名からのスタートです。そこから、順調に日本の事業が軌道に乗り、何百名規模にまで成長した会社もあります。
海外企業の日本進出に加え、アンカースターが近年注力しているのは、様々な海外「事例」の日本進出です。私たちは、日本ではまだ起きていないけど海外では起きていることを、ジャンル問わず、積極的に収集することができます。それを「タイムマシン」とし、そこから得られる数々の「警告」や「希望」を、今後の我が国の発展のために活かすことができるのではないか、と考えています。
具体的には、海外企業の経営者が昨今、積極的に取り組んでいる課題(CEOアジェンダ)や事例を研究し、そこでの失敗や成功の要因を分析し、それを、日本企業の経営者の皆さまに活用していただく取り組み「CEOアジェンダのフィジビリティスタディ(経営者が取り組む課題の実効性調査)」にチャレンジしています。
紆余曲折を経ながらではありますが、海外と日本をつなぐことができる私たちだからこそできること、なすべきことの、解像度があがりつつあることを実感しています。
不思議の国のウサギ穴から出られるかな
ふわふわした長文にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
ということで、私たちはキャロルが描いた皮肉で不思議な世界に150年間、閉じ込められているわけですが、入るウサギ穴があるならば、出るウサギ穴もあるのかも。ということで、ハシゴを登るウサギちゃんの扉絵の説明で締めとさせていただきます。
では、今年もよろしくおねがいします!
2023年1月
Envision More
児玉太郎