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アンカースターには、様々な協業会社さまから、出向社員が集まっています。出向中は、数々の新規プロジェクトを立ち上げたり、携わったりして、新しい体験の連続となります。そこで今回は、たくさんの刺激的な体験をした元出向者3名のみなさんに、それぞれの出向期間中の経験をまとめる「Zine」の制作にチャレンジしていただきました。
「Zine」は、個人でつくる小冊子のことで、語源はMaga’zine’(雑誌)から来ていると言われています。Zineのつくり方や外装に一切決まりはありません。すべてクリエイターの自由です。
この「自由」を最大限に体験(苦しんで)いただくため、アンカースターからのディレクションは一切無し。「出向期間中の体験をそのままZineとして表現してほしい」というお願いから、各自でイメージを膨らませていただきます。
そもそも、誰もZineのつくりかたを知りません。中身は自分で書くの?ライターさん?デザイナーさん?編集者さん?印刷は?製本は?お金は?誰に相談すれば?
初心者には難易度が高すぎて、完成までに半年以上かかってしまった「Zineづくり」プロジェクトの体験談を、作者のみなさんにお話しいただきました。
中山 友希さんーーパーソルホールディングス株式会社 グループコミュニケーション本部。インテリジェンス(現パーソルキャリア)営業・経営企画・事業企画を経て、同社のミッション策定プロジェクト担当として2018年にアンカースターへ出向。2020年に帰任後、パーソルホールディングスに転籍。同社のグループビジョン「はたらいて、笑おう。」実現に向け、はたらく領域におけるWell-beingのグローバル指標策定・浸透に取り組む。
井上 紗彩さんーー森ビル株式会社 新領域企画部。2007年森ビル入社、六本木ヒルズ等のブランディング業務に従事。2014年よりシンガポールでの語学研修の後、上海支社に9ヶ月赴任。2016年よりアンカースターに出向し、同社が運営するコワーキングスペースの立ち上げをする傍ら、大型の壁画アートを実現するなど、カルチャーと街の融合を目指す事業を推進。2018年に帰任後、同社の新規文化施設の企画業務に携わる。
岸 勇喜さんーー株式会社講談社 社長室 経営企画部 兼 コーポレート企画部 副部長。2007年講談社入社。広告営業、ヤングマガジン編集部を経て、2018年からアンカースターに出向。講談社創業以来初となるグローバルブランドの策定プロジェクトに携わった。帰任後は同ブランドの定着と展開を促進する業務に従事。
※聞き手/書き手ーー金巻未来。アンカースター。Zineプロジェクトリーダー。
ーーまずは岸さん。岸さんはそもそも出版社の人ですよね。やはりZineをつくるプロセスのイメージはすぐに湧いてきましたか?
岸:制作プロセスについては想像がついていましたが、アンカースター出向中にやっていたことがあまりに多岐に渡るので、内容を絞る作業が難しかったです。そこで、「出向中に出会ったクリエイターの特集」というシングルテーマにすることで、企画内容を筋立てることにしました。
ーー制作プロセスはどのような感じでしたか?
岸:企画の軸を意識しながら、素材やテキストを集めました。同時に、ラフ画を制作していきます。ラフ画というのは、文字や写真の位置を指示をするための、設計図のようなものです。これをデザイナーさんにお渡しして、実際のデザインを固めていくというやり方にしました。雑誌を作るプロセスと似ています。
ーーやはり岸さんは経験者。企画をシンプルにすることで、工程をスムーズに進めています。続いて、井上さん。制作はどのように進めましたか?
井上:以前、アートプロジェクトでご一緒した方に、ディレクションや編集をお願いするところからはじめました。ブックデザイナーさんを交えて、作りたい本のイメージを膨らませながら、織り込みたい工夫などを相談していきました。素材やテキストは自分で用意しましたが、レイアウトやデザインはブックデザイナーさんにお願いしました。
ーー制作で苦労した点はありましたか?
井上:関わっていたプロジェクトが多岐にわたるので、使いたい写真や素材の選別作業がとても大変でした。そこはディレクターさんとブックデザイナーさんに任せて選んでもらいましたが、素材を第三者の目線で選んでもらうことも大切だなと思いました。
ーー井上さんは、アンカースターの立ち上げメンバーのひとり。Zineの中でも、アンカースターがなにもないところから出来上がっていく模様がしっかり掲載されています。写真素材がふんだんにあるのも、様々な思い出をちゃんと残しておいてくれたからですね。
中山さんのZineも見せていただけますか?
中山:Zineは1冊ずつ封筒に入っていて、ミシンで縫ってあります。開け方に決まりはなくて、破っても構いません。これは、『アンカースターという会社に出向しない?』と、突然言われたときの気持ちを表現しているんです。
出向の話を聞いた当時、アンカースターは私にとって、得体の知れない何かで、どう取り組んでいいかわからなくて、だけど、なんかキラキラしていました。封筒を開けるときに、同じような気持ちを体験してもらえると思います。
ーー破るのはちょっともったいなくて、緊張しますね。これはどうやってつくるのか、制作プロセスも教えて下さい。
中山:実は、編集や制作はプロの方に依頼していなくて、みくちゃん(金巻)と手作りしました。最終的に印刷データにするところはデザイナーさんにお願いしましたが、ほぼすべて自分たちでディレクションをして、実際に印刷会社に打合せに行ったりもしました。
ーー中山さんのZineは、素人同士で調べながらつくったので、初めてのことだらけで勉強になりましたよね。せっかくなので、もう少し具体的に聞かせてください。
中山:まずは素材とテキストを用意して、デザイナーさんと一緒にレイアウトの相談をしたのですが、岸さんみたいに「ラフ画」を用意していかなかったので、あとから赤入れをたくさんする羽目になりました。デザイナーさん、何度もお付き合いいただき本当にありがとうございました、、という感じです。
デザインがなんとか出来上がってくると、次は印刷を考えます。印刷は、井上さんのZineでもお世話になった、印刷会社さんにお願いしました。そもそも素人が印刷会社で何を話せばよいのかまったくわからず。デザイナーさんに作ってもらったデザインだけ持って、とりあえず打合せに行ってみました。
印刷は、できあがったデザインを印刷するだけだと思っていたら大間違い。担当の方に、今回のプロジェクトの経緯や、実現したいことをすべてお話すると、製本についてたくさんのアイディアが出てきました。最終的に、普通の横開きだったZineは、表からも裏からも開いて読める、特殊な構造に変更。一冊ずつ封を破るというアイディアも、印刷会社さんとの相談で決まりました。
ーーZineのページ構成を変更したので、中身の構成も変更されてしまって、大変だったのを覚えています。
中山:「中の紙は裏表に印刷されるから、この構成にすると1ページ余ってしまう。」「見開きにしたかったページが見開きじゃなくなっちゃった。」などなど、たくさんの混乱が次から次へと。とにかく製本したときのページの構造(どのページがどこにくるのか)が難しくて、納品時になってミスに気がついて。セロテープとハサミと紙を持ってカフェにこもって、プロトタイプを作ったりしました。
印刷会社さんと紙選びや製本に関する決め事がすべて終わったら、最後に色を確認する「色校」というプロセスに。
何度か色校正を行って、やっとすべての工程が完了。あとは納品を待つばかりに。とても苦労しましたが、生まれてはじめて、本を作るという経験ができました。
ーーこれまでの自身の活動をZineにするという取り組みについてはどう思いますか?
井上:色々なところに散らばっていた記録をすべて一箇所に集めて、自分のやってきたことをあらためて整理できたのがよかったです。やってきたことを、まとめて人に見せて伝える手段がなかったので。自分のポートフォリオができた感じです。実は先日、地元地域のまちづくりをしている方に新しく出会いました。そこで、今までこんな活動していたんです、とZineを渡しました。そうしたら一発で自分のことが伝わって、信頼してもらえました。
岸:学びを絵にするってなかなかできないから、とても良い機会でした。一度作るとずっと残るし、作りながら自分の中の色々なものが整理されました。
ーーみなさん、想いのこもった素晴らしい作品をありがとうございました!
明確な指示もなく、なにかを「自由に制作する」という機会は、大人になるとなかなか貴重かもしません。そして、いざ自由に直面すると、何をどう表現していいのか考えることがいかに難しいか気づくと思います。
Zineづくりは想いが形になって残る、素晴らしいプロジェクトです。読者のみなさまも、もし機会があれば、ぜひZineづくりにチャレンジしてみてください。
※3名のZineはアンカースターで無料配布しています。興味がある方は、お気軽にお声がけください。